「体重を減らした方がいいですよ」
医療の現場で、この言葉を聞いたことがある方は少なくないと思います。
しかし実際には、
- 何kgくらい減ると変わるのか
- 身体にはどんな変化が起きるのか
- 生活はどう変わるのか
まで具体的に語られることは多くありません。
今回ご紹介するのは、私が理学療法士として担当した2人の女性の実例です。
お二人とも股関節症に対して人工股関節全置換術(THA)を受けました。(注:前方進入による手術であり、術式による可動域制限はありません。)
そして数か月後に再会した時、私はある共通点に気づいたのです。
それは体重でした。
外来リハビリ終了後、数ヶ月後の再会
お二人とも手術後の経過は順調でした。
痛みは大きく改善し、歩行や日常生活動作も少しずつ回復していました。
しかし術後3〜4か月頃になると、改善のスピードは徐々に緩やかになっていました。
リハビリ専門職間の症例検討会では、
- 骨盤の動き
- 歩き方
- 股関節伸展
- 殿筋群の働き
- 荷重のかけ方
などについて繰り返し議論していました。
そんな時期を経て、お二人と再会しました。
すると以前とは少し違って見えたのです。
歩き方が軽くなっていました。
表情も明るくなっていました。
そして何より、生活そのものが変わっていました。
吉成芙美さんの変化
吉成芙美さん(仮名)は47歳の女性です。
先天性臼蓋形成不全を背景に両側変形性股関節症を発症し、両側人工股関節全置換術(THA)を受けました。
術後半年ほどして再びお会いした時、私は驚きました。
以前よりも、骨盤の前後傾が滑らかになっていたのです。

吉成さんは当初、長年の股関節症の影響で、股関節だけではなく、周囲の骨盤などにも大きな機能不全を認めました。
それだけではなく、
前屈動作もしやすくなっていました。
立ったまま靴を脱ぐ動作も自然になっていました。
階段も手すりなしで一足一段ずつ昇降できるようになっていました。
さらに、
「化粧をして出掛けることが増えました」
と話してくださいました。
体重は55kgから51kgへ。
4kg減っていました。
BMIは25.5から23.6へ変化していました。
私が印象に残っているのは体重計の数字だけではありません。
以前より動きが自然で、自信があるように見えたことでした。
及川謙子さんの変化
及川謙子さん(仮名)は60代後半の女性です。
先天性股関節脱臼を背景に股関節症を発症し、人工股関節全置換術(THA)を受けました。
術後約4か月後に再会した時、こちらも印象的な変化がありました。
以前より歩き方に余裕がありました。
股関節伸展も改善していました。

股関節の伸展(後ろに伸ばすこと)が出来ないと、歩行の時に、脚を後ろに送れなくなるなど、バランスや推進力に多大な影響をきたします。
そして、
「1時間くらい歩けるようになりました」
と話してくださいました。
さらに、
「海外旅行にも行けました」
「パートも始めました」
と楽しそうに近況を教えてくださいました。
体重は63kgから56.5kgへ。
6.5kg減っていました。
BMIは25.2から22.6へ変化していました。
こちらも体重だけではなく、生活そのものが大きく変わっていました。
2人に共通していた変化
| 項目 | 吉成芙美さん | 及川謙子さん |
| BMI | 25.5 → 23.6 | 25.2 → 22.6 |
| 主な身体変化 | 骨盤前後傾改善、前屈改善、立位で靴を脱げるようになった、階段昇降改善 | 股関節伸展改善、1時間歩行可能 |
| 主な生活変化 | 化粧をして外出するようになった | パート復帰、海外旅行 |
| 体重変化 | 55kg→51kg (−4.0kg) | 63kg→56.5k (−6.5kg) |
吉成さんと及川さんは年齢も生活環境も違います。
減量方法(今後記事にまとめます)も同じではありません。
小太り(軽度肥満)は医療では主役になりにくい
日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と分類しています。
ただ、整形外科の現場ではBMI25前後の方は珍しくありません。
診療やリハビリでは、
- 痛み
- 歩行能力
- 関節可動域、筋力
- 日常生活動作
など、優先して考えるべき課題が数多くあります。
そのため、小太りと呼ばれる程度の体重は主役になりにくい印象があります。
私自身も当時は、減量を積極的にはすすめていませんでした。
ところが、結果的にお二人は、4〜6kg体重減少し、以前より活動的になって、生活の幅が広がっていたのです。
体重が4〜6kg減ると身体にはどんな変化が起こるのか
もちろん、
「4kg痩せたから良くなった」
「6.5kg痩せたから良くなった」
と断定することはできません。
しかし、4〜6kgという数字は決して小さくありません。
例えば体重60kgの人が5kg減ると、体重の約8%が減る計算になります。
体重が変わることで、
- 関節への負担
- 動作時の身体の使いやすさ
- 腰回りや腹部の動きやすさ
- 活動量
などにも変化が生じる可能性があります。
実際、吉成さんでは骨盤前後傾や前屈動作の改善がみられました。
及川さんでは歩行距離の増加や活動範囲の拡大がみられました。
まとめ|私が忘れられない2人の女性
吉成芙美さんと及川謙子さんは、年齢も生活環境も異なります。
しかし、
- BMIが25前後だったこと
- 人工股関節全置換術(THA)を受けていたこと
- 数か月後に体重が減っていたこと
という共通点がありました。
定期外来が終わった後にお会いしたお二人は、4〜6kgの体重減少に伴い、以前より活動的になり、生活の幅が広がっていたことが驚きでした。
(ちなみに、痩せた原因については、私なりに把握しています。ただ、その経緯や詳細については別の記事であらためてご紹介したいと思います。)
この2人の女性は、今でも強く記憶に残っています。
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