退院したばかりなのに、また高熱で入院…|菌血症を経験した関節リウマチ50代女性の実例

「また熱が出た…」

退院してようやく自宅へ戻り、「これから少しずつ元の生活に戻れそうだ」と思っていた矢先、再び高熱が出て病院へ向かうことに……

関節リウマチでは、病気そのもののコントロールに加えて、治療薬の影響によって生じる感染症のリスクを考えながら生活していくことが大切になる場合があります。

予期せぬ感染症の発症は、単に身体がつらいだけでなく、それまで築いてきた日々の暮らしや予定を強制的に止めてしまうという、生活上の大きな課題を併せ持っています。

今回ご紹介するのは、関節リウマチと間質性肺炎の治療を続ける中で菌血症(細菌が血液の中に入り全身へ広がった状態)を発症し、度重なる入退院に直面した沼田繭子さん(仮名・50代女性)の実例です。

この記事では、感染症に関する医学的な解説にとどまらず、突発的な入院によって生活がどのように止まってしまい、そこからどのように暮らしをもう一度動かしていったのかを理学療法士の視点を用いてご紹介します。

関節リウマチの治療中は感染症にも注意が必要です

関節リウマチの治療では、関節の腫れや骨が壊れていくのを抑えるために、免疫(体に侵入した細菌などと戦う仕組み)の働きを調整する薬が使われることがあります。

また、沼田さんは難病である間質性肺炎(肺の組織が慢性的な炎症によって硬くなる病気)の治療のため、ステロイドの内服薬による治療も併行していました。

これらの薬剤はリウマチの勢いを抑えるために不可欠である反面、身体が細菌などと戦う力を弱めてしまう側面を持っています。

そのため、普段ならかからないような弱い細菌に対しても身体が影響を受けやすくなり、予期せぬ感染症を引き起こすことがあります。

日常の中で、急な発熱、寒気、あるいは関節の急激な痛みといった変化を捉えた際は、決して無理をして様子を見ず、早めに主治医へ連絡することが大切です。

菌血症とは

菌血症とは、本来は細菌がいないはずの血液の中へ細菌が入り込み、全身へ運ばれた状態です。

急激な高熱や身体の激しい震え、強いだるさなどが現れ、速やかに入院して点滴による抗菌薬治療を行う必要があります。

早い段階で適切な治療を始めることができれば、比較的速やかに改善へと向かうケースが多くありますが、対応が遅れると全身の状態が急激に悪化することもあるため、早期の診断と治療開始が重要とされています。

入院のたびに、生活は途中で止まってしまいました

沼田さんは、ある日の朝からの発熱と、両膝の強い痛みが生じて医療機関を受診した際、菌血症と診断されました。

同時に腎機能の低下も確認されたため、その場で即時入院となりました。

この直前まで、沼田さんの生活はとても順調に広がっていました。

股関節の手術を経て歩くときの激痛から解放され、お孫さんの世話や自炊、掃除、長時間の外出など、一人暮らしを続けるための動作を自発的に増やせていたのです。

リハビリの場面以外でも、自主的な筋力トレーニングやマッサージを熱心に取り入れられていました。

しかし、菌血症の治療が始まり、薬によってデータ上の炎症が治まっていく一方で、それまで積み重ねてきた暮らしは、一度立ち止まることになりました。

・献立を考え、台所に立って自分の食事を用意すること

・近所のスーパーや楽しみにしていた外出先へ足を延ばすこと

・自宅での訪問リハビリの時間を過ごすこと

これらはすべて一度リセットされ、生活の中心は、再び病室で過ごす毎日に戻りました。

数週間の治療を経て無事に退院できたものの、退院直後の沼田さんの身体は、高熱による消耗と長期間のベッド生活によって、体力が著しく低下していました。

椅子からの立ち上がりが難しくなり、両膝の痛みも残っていたため、室内での移動は車椅子を使用する時間が増えていきました。

近所に住む娘さんに日々の家事を頼らざるを得なくなり、「今の自分の力で、一体どこまで動いていいのだろうか」と、動くことへの不安が強くなっている状態でした。

退院後は"元の生活に戻る準備"から始まりました

病院での治療が終わって熱が下がったからといって、すぐに自宅で元通りに動けるわけではありません。

入院中のベッドの上の生活によって、身体の筋肉は想像以上に細くなり、体力も落ちてしまうからです。

退院直後の沼田さんに対して、理学療法士として最初に取り組んだのは、

  • どのくらい動くと疲れや息切れが出てしまうのか
  • 立ち上がったり伝い歩きをしたりするとき、膝に負担がかかる不自然な力が入っていないか
  • 少し家事をした後、翌日に疲れが残らない活動量はどのくらいか

という「今日はここまでなら動いても大丈夫そうか」を、日々の訪問の中で沼田さんの状態を確かめながら、一緒に確認していきました。

退院直後の弱っている身体に対して、焦って無理な運動をしてしまうと、膝の痛みが強くなったり、過度な疲労から再び体調を崩してしまったりする恐れがあります。

その日の疲労感や体調をしっかりと見極めながら、無理のない範囲で少しずつ暮らしを組み立てていったことが、その後の安心できる療養生活につながっていきました。

感染症は治っても生活機能は自然には戻らない

医療の現場では、血液データが改善し、熱が下がれば急性期治療はひと区切りとなります。

しかし、自宅に戻った患者さんにとっては、そこからが生活を動かす本当のスタートです。

長期間にわたって身体を動かさない状態が続くと、関節が硬くなり、特に立ち上がりや歩行に必要な太ももの筋力が著しく低下します。

これらは、ただ自宅で安静にして過ごしているだけでは、自然に元の状態へ戻ることはありません。

だからこそ、現在の筋力や関節の状態に合わせたリハビリが必要になります。

沼田さんの場合も、膝の痛みをかばうために太ももの筋肉が強く緊張し、それが原因でさらに椅子から立ち上がりにくくなるという悪循環が起きていました。

そこで訪問リハビリでは、硬くなっている筋肉をほぐして関節の動きを整えたうえで、膝に余計な負担をかけずに楽に立ち上がるための身体の使い方を練習していきました。

ただ闇雲に動くのではなく、「どのように動けば痛まずに安全か」をひとつずつ整理していくことで、車椅子から伝い歩きへ、さらに自分の足での移動へと、安全に生活の範囲を戻していくことができるのです。

理学療法士として感じたこと

突発的な感染症による再入院を経験すると、多くの当事者は「せっかく自宅で動けるようになったのに、すべての努力が水の泡になってしまった」と、強い喪失感や諦めの気持ちを抱きやすくなります。

しかし、理学療法士として多くの経過を見届けてきた経験から言えるのは、入院前に取り組んでいた身体の動かし方の記憶や、日々のトレーニングの積み重ねは、決してゼロにはならないということです。

確かに一時的に生活は止まってしまいますが、体調が安定すれば、以前よりもずっとスムーズに動く感覚を取り戻すことができます。

リハビリの役割は、単に歩く距離を伸ばしたりスピードを速くすることだけではありません。

予期せぬ体調の変化によって生活が不意に止まってしまったときに、その変化を一緒に受け止め、そこから再び立ち上がるための道筋を少しずつ積み重ねていくことこそが、大切な役割なのだと感じています。

まとめ

関節リウマチの治療を続ける中で、お薬の影響による感染症の発症と、それによる突発的な再入院は、決して珍しいことではありません。

沼田さんも、菌血症という大きな試練によって、順調だった自宅生活を一時的に中断せざるを得ない局面を迎えました。

それでも、その時々の身体の状態を受け止めながら、必要なサポートを適切に活用し、暮らしをもう一度動かしてこられました。

感染症は、病院での治療が終われば一区切りつきます。

しかし、一度止まってしまった生活は、何もしないままでは自然には動き始めません。

もう一度自分の手で料理をする。

もう一度自分で買い物へ行く。

もう一度自分の足で部屋の中を歩く。

そんな当たり前だった日常のひとコマをひとつずつ取り戻していく時間、その積み重ねが、もう一度「自分らしい暮らし」を取り戻していく力になっていくのではないでしょうか。

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