「筋力トレーニングをやったほうが良いとはわかっていても、なかなか始められない」
「筋力トレーニングをやっても、どうせ続かない」
こう感じる方は多いのではないでしょうか?
そんな場合は、
① 公的保険サービス(医療保険・介護保険)を活用する
② 民間のフィットネスジムを利用する
の2つの方法を検討してみるのがおすすめです。
一人で頑張るよりも、専門家のサポートを受けることで、正しいフォームで無理なく継続できる可能性が高くなります。
今回は、そんなお悩みを持つ渡辺さん(仮名・76歳)の事例を紹介します。
勉強家・渡辺さん(76)の日常
『筋肉は、歳をとるにつれ衰えやすくなる。特に、姿勢を保ち、素早く動くために重要な筋肉は、首、背中、腹、臀部、太もも……』
新聞の健康コラムを読みながら、渡辺さんはふと鏡を見ました。
「…なんだ、ワタシ、全部がたるんでて、筋肉なんかどこにも無いじゃないの!」
とくに太ももは、便器から立ち上がるたびに、弱くなっていることを実感していました。
彼女は記事を切り抜き、愛用のスクラップノート(なんと12冊目!)に貼りつけました。健康情報を集めるのは、もはや日課です。
きっかけは、夫との死別
渡辺さんは70歳のときに夫を亡くしました。
覚悟はしていたものの、いざ一人になると食卓は広く見え、テレビの前で笑うのも自分だけ。時間が余ることが、思った以上に寂しさを感じさせました。
そんな中、気を紛らわすようにおやつをつまむ習慣がついてしまい、気づけば体重が8kg増加。
さらに、ある日カーテンを閉めようとして転倒してしまったのです。
幸い大きな怪我はなかったものの、娘に連れていかれたクリニックで医師から「筋力トレーニングを始めましょう」とすすめられました。
「娘にこれ以上心配をかけたくない…」
そう思った渡辺さんは、NHKのテレビ体操やワイドショーのワンポイントレッスンを見て、自宅で筋力トレーニングを始めました。週2回、クリニックで電気治療も受けるようになりました。
「トレーニングしているのに効果がない」その理由とは?
しかし、数か月経っても思うような変化がありませんでした。
むしろ、玄関で立て続けに2回も尻もちをついてしまい、「やっているのに、なぜ?」と不安になりました。
実は、ここに大きな落とし穴がありました。
渡辺さんの筋力トレーニング、実は「正しくできていなかった」
クリニックでスクワットを試してみると、問題がすぐに明らかになりました。
渡辺さんがやっていた間違ったスクワットのやり方:
・膝が足部よりも大幅に内側に入っている
・骨盤が後ろに倒れ、お尻に力が入っていない
こうしたフォームの乱れはほんの一部です。
それで、筋肉に適切な刺激を与えられず、効果を妨げていたのです。
渡辺さん自身は「やっているつもり」でも、実際は正しくできていないことに気づいていませんでした。
筋力トレーニングは、正しい姿勢をとることが最も重要です。
渡辺さんが選んだ解決策は…
そこで渡辺さんは、外来リハビリテーションを受けられる病院へ通うことを決意しました。
週2回、リハビリ専門職の指導を受けながら、正しいトレーニング方法を学び、実践することにしました。
4か月後——
・立ち座りや階段の上り下りが楽になった
・家事の負担が減った
・娘と海外旅行にも行けるようになった
この変化は、正しいフォームと継続的な指導のおかげでした。
病院のリハビリを選ぶ際のポイント
もし「一人でやるのは難しい」「フィットネスジムは続けられるか不安」という場合は、外来リハビリテーションの利用を検討してみてください。
病院選びのポイント:
・セラピストが直接、身体の状態を評価してくれるか
・自宅でのトレーニング(ホームエクササイズ)の指導が充実しているか
特に、医療保険を利用できる場合は費用負担が少なく済むため、選択肢として考えやすいでしょう。
まとめ
「筋力トレーニングをやろうと思っているのに続かない」場合、
✔ 専門家のサポートを受けることで、正しく効率的にトレーニングを行える
✔ 公的保険サービスやフィットネスジムを活用することで継続しやすい
渡辺さんのように「やっているつもり」でも、正しい方法でできていないと効果が出にくいことがあります。
もし、「一人でやるのは不安」と感じたら、適切なサポートを受けることで、より効果的に筋力をつけられるかもしれません。

注:そのもっと数年後の現在、82歳の渡辺さんは介護保険サービスを利用されています