【理学療法士が解説】「筋トレ」とは何か?高齢者にもわかる医学的な定義と本質

「最近、うちの親、ちょっと動きにくそうだな…」
「本人は『大丈夫』って言ってるけど、なんとなく心配…」
そんなふうに感じたことはありませんか?

この記事では、理学療法士として約20年高齢者と向き合ってきた私が、「筋トレ」(=筋力トレーニング)の本質と“生活を守るための身体づくり”について、できるだけ簡潔に解説します。

「専門用語なし」「医学用語をかみ砕いて」「親や自分が今日から始められる視点」でお届けします。
ぜひ、あなたとご家族の生活の“安心の第一歩”にしてください。

「筋トレ」の定義とは?

一般的なイメージと、実際の「筋トレ」の違い

「筋トレ」と聞くと、ジムで重いダンベルを持ち上げるようなイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、実際には、筋力を向上させるために筋肉に適切な負荷をかける運動全般を指します。
これは、日常生活の中で行う簡単な動作や、自分の体重を利用した運動も含まれます。

「筋トレ」と「筋トレの負荷」

「筋トレ」は、筋肉に適切な負荷をかけて収縮させることで、筋力や筋持久力を向上させる運動です。
この負荷は、重りやマシンを使うだけでなく、自分の体重(自重)を利用した運動でも効果的です。
​例えば、椅子からの立ち座りや段昇降、壁を使った腕立て伏せなどが挙げられます(後述)。

なぜ高齢者にも「筋トレ」が必要なのか

年齢とともに、筋力は自然に減っていく

年齢を重ねると、筋肉量や筋力は自然と減少します。​
これは「サルコペニア」と呼ばれ、日常生活の動作が困難になる一因となります。​
しかし、適切な「筋トレ」を行うことで、高齢者でも筋力を維持・向上させることが可能です。

「筋トレ」が転倒や寝たきりの予防に直結する理由

筋力の低下は、転倒や骨折のリスクを高め、最悪の場合、寝たきりの原因となります。​
特に下半身の筋力を鍛えることで、バランス能力が向上し、転倒のリスクを減少させることができるのする研究報告があります。
実際、90歳以上の高齢者でも、「筋トレ」により筋力増強が認められたとの報告があります。

「リハビリ」と「筋トレ」の違い

「リハビリ」と聞くと、ケガや病気からの回復を目的とした訓練、という意味が強い一方、
「筋トレ」は、リハビリのメニューにも加わりますが、「筋トレ」自体は、介護予防や健康維持、機能向上を目的とした広く万人に対応する運動です。​
例えば高齢者の場合、リハビリで基本的な動作を回復した後、「筋トレ」を継続することで、寝たきり防止やさらなる生活の質の向上が期待できます。​

「筋トレ」を始める前に知っておきたい3つの視点

生活を整える「基礎の基礎」

「筋トレ」は、日常生活をスムーズに行うための基盤を作ります。​
例えば、ベッドから起きる、椅子から立ち上がる、階段を上る、かがんで物を取る、といった動作も、筋力が必要です。​
「筋トレ」を行うことで、これらの動作が楽になり、生活の質が向上します。​

初心者でもできる方法(椅子・壁など)

高齢者でも無理なく始められる「筋トレ」方法があります。
​例えば、椅子からの立ち座り運動や、壁を使った腕立て伏せ、階段昇降などです。
​これらは特別な道具を必要とせず、自宅や近所で簡単に行うことができます。​
実際、椅子からの立ち座り運動(チェアスクワット)でも、姿勢や運動速度を適切に行えば、筋力やバランス能力の向上が充分に期待できます。​

続けることが、未来を変える

「筋トレ」の効果を得るためには、継続が不可欠です。
​週2〜3回の頻度で続けることで、徐々に筋力が向上し、日常生活での動作が楽になります。​
無理のない範囲で、長く続けることが大切です。​
研究によれば、週2回の「筋トレ」を3ヶ月間行うことで、歩行機能や主観的健康観の向上が得られることが示唆されています。

まとめ|「筋トレ」は“自分の未来を整える第一歩”

「筋トレ」は、高齢者にとっても非常に重要な運動です。
​適切な「筋トレ」を行うことで、日常生活の質が向上し、健康的な生活を維持することができます。

​ぜひ、無理のない範囲で「筋トレ」を始めてみてください!


参考文献

  1. 高齢者における筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響. 理学療法学, 39(3), 2012. ​
  2. 中高齢者に対する筋力トレーニングおよびストレッチ指導の効果. 日本臨床スポーツ医学会誌, 27(2), 2010. ​
  3. 中高年齢者における高強度筋力トレーニングの効果とその意義. 信州大学繊維学部研究報告, 14, 2008. ​
  4. 高齢者の筋力と筋力トレーニング. 理学療法科学, 18(1), 2003. ​
  5. 高齢者における運動の重要性. CORE, 2010.