「昼間は何とか動かせるのに、夜になると肩がズキズキ痛む」
「寝返りを打った瞬間に激痛が走り、夜中に何度も目が覚めてしまう」
「痛い肩を下にして眠れず、五十肩なのか腱板が切れているのか不安になる」
夜間や就寝中に肩の痛みが強くなると、十分な休息がとれず、心身ともに大きな負担を感じる方は少なくありません。
夜間痛は、「眠れているか」ということに加え、肩の状態を確認するための重要な手がかりです。
この記事では、夜間痛の出方の整理や考えられる肩の状態、就寝時の工夫、理学療法士が確認する着眼点についてわかりやすく解説します。
夜に肩が痛い「夜間痛」とは?
「夜に肩が痛い」といっても、睡眠のどのタイミングで、どのように痛むかは人によって異なります。
まずは、ご自身の痛みの出方を整理してみましょう。
布団に入って横になったあと、肩の奥がズキズキと痛んでなかなか寝付けない状態です。
肩に体重をかけていなくても、安静にしているだけで痛みが気になることがあります。
寝付くことはできるものの、夜中や早朝に肩のズキズキとした痛みによって途中で目が覚めてしまう状態です。
一度起きると痛みが引くまで再入眠が難しくなることもあります。
眠っている間に寝返りを打ち、腕や肩の位置が大きく動いた瞬間に鋭い痛みが走って目が覚める状態です。
痛む側を下にした姿勢で、肩への圧迫や腕の位置の変化に伴って痛みが強まる状態です。
これらの違いは、「この症状だからこの病気」と自己診断するためのものではなく、医療機関でご自身の状態を正確に伝え、評価を進めるための大切な手がかりになります。
夜に肩が痛むときに考えられる主な状態
肩の夜間痛には、いくつかの病態や組織の状態が関わっている可能性があります。
五十肩・凍結肩では、経過の中で夜間痛がみられることがあります。
肩のインナーマッスルである腱板の損傷や断裂がある場合にも、夜間痛が生じることがあります。ただし、夜間痛の有無だけで断裂の有無や大きさを判断することはできません。
肩関節の手術を受けた後、組織の修復過程や術後の固定、周囲組織への負荷などに伴い、術後早期に夜間痛で睡眠が妨げられる場合があります。
腱板の中にリン酸カルシウムなどの結晶が沈着する石灰沈着性腱板炎では、急激な強い炎症によって、夜間や安静時にも耐えがたい激痛が生じることがあります。
首の神経の圧迫(頸椎症など)による放散痛や、まれに内科的要因に伴う関連痛が夜間に肩周辺の不快感として自覚されるケースもあります。
なぜ夜になると肩が痛むの?
「なぜ昼間よりも夜に痛みが強くなるのか」という疑問に対しては、単一の原因だけで説明することはできません。
夜に肩が痛む仕組みには、肩周囲の組織の炎症や痛みに対する過敏さ、横になったときの腕や肩の位置、患部への物理的な圧迫など、複数の要素が関係していると考えられています。
また、痛みによって眠れない状態が続くと、睡眠不足そのものが翌日の疲労感や痛みの感じ方に影響を与えることもあります。
立っているときや座っているときと比べ、横になることで腕や肩の位置、圧迫のかかり方が変わり、痛みの感じ方が変化することがあります。
「夜痛むから絶対に手術が必要だ」「腱が完全に切れているに違いない」と過度に恐れる必要はありません。
夜間痛の強さと構造的な損傷の程度が必ずしも完全に一致するわけではないため、身体機能と合わせて総合的に判断されます。
肩の痛みで眠れないとき、寝方はどうすればいい?
就寝時の姿勢を工夫することで、肩にかかる物理的な負担を一時的に和らげられる場合があります。
ただし、「誰にとっても絶対に正しい唯一の寝方」があるわけではありません。ご自身が最も痛みが少なくリラックスできるポジションを探すことが基本です。
痛む側を下にすると明らかに痛みが強くなる場合は、その姿勢を無理に続ける必要はありません。
仰向けや、痛みのない側を下にした横向きなど、刺激の少ない姿勢を試してみましょう。
横になったときに腕が宙に浮いたり後ろへ引っ張られたりすると、肩にストレスがかかりやすくなります。
- 仰向けで寝る場合:肘や前腕の下に折りたたんだバスタオルや薄いクッションを敷き、肘がベッドに沈み込みすぎないように少し支える
- 痛くない側を下にして寝る場合:抱き枕やクッションを抱え、痛む側の腕をその上に乗せて身体の前に安定させる
「高さを何cmにする」「角度を何度にする」と厳密に固定するのではなく、腕の重みが抜けて肩が楽に感じる位置に微調整することが大切です。
仰向けの場合、肩よりも下に肘が沈まないようにクッションを敷いてみてください。
肩の夜間痛では「眠れているか」そのものを確認する
肩のリハビリテーションや診療において、夜間痛は単なる痛みの強さだけでなく、「睡眠という生活基盤がどの程度守られているか」という視点からも評価されます。
- 布団に入ってから寝つくまでにどのくらい時間がかかっているか
- 肩の痛みによって夜中に何回目が覚めてしまうか
- 目が覚めたあと、すぐに再び眠りにつくことができるか
- 睡眠不足によって、翌日の日中の活動(仕事、家事、運転など)に支障が出ていないか
痛みの程度だけでなく、睡眠への具体的な影響を把握することが、適切な治療や生活指導を進める上で重要になります。
実際の症例では「眠れること」を優先していた
臨床では、肩の可動域や筋力だけでなく、夜間痛による睡眠への影響が重要な生活課題になることがあります。
腱板断裂の手術(ARCR)を受けた患者さんを例にすると、術後早期に「夜眠れない」「痛くて寝られない」という強い訴えが続く場合があります。その際は、「夜に痛みがなくなり、しっかり眠れるようになること」がリハビリ計画の最優先課題として共有されます。
寝る前にストレッチした方がいい?
「夜痛いから、寝る前によくストレッチをして肩をほぐした方がよいのではないか」と考える方もいますが、一律に運動をおすすめすることはできません。
強い痛みがある状態で、痛みを我慢して大きく動かしたり強く伸ばしたりすると、症状が悪化する場合があります。
自己流で痛みを我慢しながら肩を大きく回したり伸ばしたりすることは避け、運動の可否については専門職に確認しましょう。
理学療法では夜間痛の何を確認する?
医療機関での理学療法では、以下のようなポイントを総合的に確認します。
- 夜間痛が起きる時間帯や寝姿勢、睡眠への影響度合い
- 普段、腕を動かしたときの痛みの有無や痛む方向
- 自分で動かせる範囲(自動運動)と他者が動かしたときの範囲(他動運動)
- 肩周囲の筋力や腱板の働き
- 肩甲骨や胸郭(背骨や肋骨)などを含めた複合的な動き
夜間の状態だけでなく、普段の動作や姿勢を含めて全体像を把握していきます。
こんな場合は医療機関へ相談を
夜間の肩の痛みが続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、我慢を続けずに整形外科を受診しましょう。
- 夜間痛によって何日も睡眠が妨げられている
- 痛みに加えて、日中に腕を上げにくい・動かしにくい状態が続いている
- 転倒や衝突などの外傷の後から夜間痛が始まった
- 肩の手術後、徐々に痛みが強くなっている
- 発熱や悪寒、全身のだるさを伴う強い肩の痛み
- 肩の関節部分が赤く腫れ上がり、触ると熱を持っている
- 転倒などのケガの直後から腕がまったく上がらなくなった
- 腕や手先にかけて強いしびれや脱力、麻痺が急速に進行している
- 胸の圧迫感や息苦しさ、冷汗など、肩以外の身体の異常を伴っている
まとめ|夜間痛は「肩」と「睡眠」の両方から考える
夜に肩が痛くて眠れない症状と向き合う上で、大切なポイントは以下の通りです。
- 夜間痛はあらゆる疾患で生じる。痛みが強い弱いだけでは重症度はわからない。
- 入眠時・中途覚醒・寝返り・特定の寝姿勢など、痛みの出方を整理することが大切である
- 横向きや仰向けの姿勢で腕の重さをタオルやクッションで支える工夫が役立つ場合がある
- 痛みの強さだけでなく、「どの程度眠れているか」「翌日の生活に影響しているか」を確認する
- 強い痛みを我慢して自己流のストレッチを繰り返さず、必要に応じて医療機関へ相談する
ご自身の夜間痛がどのタイミングで生じているかを確認し、痛みが強まらない範囲で腕を支える位置を調整してみましょう。
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