膝の手術後、
「まっすぐ伸びない」
「歩くと膝が少し曲がったままになる」
「リハビリしているのに変わらない」
と感じて、不安になる方は少なくありません。
前回の記事では、「術後に膝が曲がらない(屈曲)」について整理しました。
一方で今回扱うのは、
膝が伸びない(伸展)
です。
曲げるも伸ばすも、もちろん大事な術後の回復の目安の一つではありますが、ここは少し意味を区別します。
膝がどれだけ曲がる(屈曲する)かというのは、
- 座る
- 階段を上る
- 車の乗り降り
- トイレ動作
など、
生活動作で“届く範囲”に関係しやすい動きです。
一方、膝が伸びる(伸展)は、体重を支える機能としての意味が大きくなります。
立つ。
歩く。
方向を変える。
坂道を歩く。
こうした動きの土台になるからです。
つまり、
「膝が少し伸びないだけ」
に見えても、歩きやすさや疲れやすさに大きく影響することがあります。
さらに大切なのは、
膝が伸びないから歩きにくくなるだけではなく、
歩き方や身体の使い方の結果として、膝が伸びにくくなる、ということも実はよくあることです。
膝の手術後、「膝が伸びない」とはどんな状態?
「膝が伸びない」といっても、人によって感じ方は違います。
例えば、
- まっすぐ立ちにくい
- 歩くと膝が少し曲がったままになる
- 膝裏が張る
- 片脚に体重を乗せるのが不安
- 太ももの前ばかり疲れる
- 長く歩くとしんどい
- 階段や坂道で不安定
こうした感じ方です。
見た目や角度上は「少し曲がっているだけ」と思うかもしれません。
でも、膝は歩くとき、
体重を受けて支える役割
があるので、少しの角度の違いでも生活への影響は小さくありません。
参考:膝が曲がらない実例 ↓
【実例】膝を伸ばすことだけでは変わらなかっ60代女性
実際に、術後に膝が伸びにくくなっていたケースを例として挙げます。
ある60代の女性患者さんは、
長く左膝の痛みを抱えた末、関節の全置換術(TKA)を受けました。
急性期の管理が終了して退院し、数週間絶った現在まで困っていたのは、
「膝をまっすぐ伸ばそうとすると、膝のうしろが痛い」
ということでした。
膝の動きを見ると、確かに伸びにくさはあります。
ここでご本人が考えやすいのは、「伸びないなら、伸ばす練習をしてもらえばよいのでは?」ということです。
実際、このケースも、膝そのものへのアプローチは積極的に行われていました。
ただ、膝を無理に伸ばそうとすると、かえって痛みが強くなりやすい様子も目立っていました。
そこで歩き方を詳しく診てみると、別の問題が見えてきました。
この方は、
膝を少し曲げたまま体重を支え、股関節や足首もあまりしっかり使わず、身体を前後に揺らして前へ進むような歩き方になっていました。
つまり、膝だけではなく、身体全体で無理をして進んでいたのです。
そこで、膝を伸ばすことだけに集中するのではなく、
- お尻まわりの筋肉(臀筋)
- 体幹の安定
- 身体全体の使い方
を見直したところ、徐々に歩きやすさに変化が見られ、痛みがなくなっていきました。
このケースが教えてくれるのは、「膝が伸びない = 膝だけの問題」とは限らないということです。
なぜ膝が伸びにくくなる?
術後に膝が伸びない理由は一つではありません。
術後は腫れが残ることがあります。膝が腫れると、物理的に伸びにくくなることもあります。
さらに、
- 重い
- 張る
- 動かしにくい
と感じることがあります。
痛みがあると、身体は無意識に守ります。例えば、
痛い
↓
少し曲げたまま使う
↓
体重をしっかり乗せにくい
こうした流れです。
短期的には支障なくとも、続くと、膝を伸ばして体重を支える正しい使い方が出来なくなってしまいます。
術後のリハビリで、膝の下にタオルを入れて押しつぶす運動をやったことがある方はほとんど全員ではないでしょうか。

これは、膝を支えるときに大切な太ももの前の筋肉を使いやすくするために行われるものです。
術後は、痛みや腫れ、長くかばっていた影響などで、“力がない”というより、“うまく使いにくい”状態になることがあります。
とくに、大腿四頭筋の内側の部分の機能不全により、膝を伸ばせなくなる例はものすごく多いです。
長く痛みをかばっていた方では、歩き方のクセが残ることがあります。
手術で関節の状態が変わっても、身体の使い方まで一気に変わるとは限りません。
多少痛くても我慢して伸ばしたほうがよい?
ここで迷う方は多いと思います。
「もっと頑張って伸ばしたほうがいいの?」
「痛くてもやるべき?」
「自力で何とかするしかない?」
手術後、診察で、「あとはリハビリを頑張るしかないですね」と言われて、
「もう終わり?」と感じる方も多いと思います。
でも、ここで言われるリハビリを頑張る、の内容は、“何も治療することはない”という意味ではありません。
むしろ、機能を取り戻していくスタートラインにたったということです。
例えば、
- 支える筋力を戻す
- 体重をかける感覚を覚える
- 身体の使い方を整える
- 歩き方を再学習する
こうしたアプローチをリハビリで始めます。
歩き方や身体の使い方の結果として、膝が伸びにくくなることもあります
ここは意外に思われるかもしれません。
「膝が伸びない」と聞くと、多くの方は、
膝そのものが硬い
関節が動かない
と考えます。
もちろん、それもあります。ただ、実際の臨床では、歩き方や身体の使い方の結果として、膝が伸びにくくなっているケースも少なくありません。
痛みがある
↓
無意識に体重を逃がす
↓
膝を少し曲げたまま使う
↓
その歩き方が続く
↓
膝をしっかり伸ばして支える機会が減る
こういう流れです。
また、
- 股関節が曲がったまま
- 身体が前かがみ
- お尻の筋肉が使いにくい
- 体重を乗せるのが怖い
こうした状態でも、膝の伸びにくさが助長されてしまうことがあります。
繰り返しになりますが、「膝を伸ばす」ことだけに集中しても、変わりにくいことがあるということです。
どんなとき相談を考える?
次のような場合は、主治医や担当療法士に相談してよいタイミングかもしれません。
- 一度よくなっていたのに悪くなった
- 腫れや熱感が増えた
- 強い痛みがある
- 歩きにくさが強くなった
- 以前よりまっすぐ立ちにくい
- このままでよいのか不安
まとめ
膝の手術後に膝が伸びないと、
- 支えにくい
- 歩きにくい
- 疲れやすい
- 他の場所に負担が出る
状態になってしまいます。
ここで大切な視点は、膝が伸びないのは膝だけの問題とは限らないということです。
長く困っていても、リハビリ内容の見直しで変化することがあります。
一人で抱え込まず、医療機関に相談しながら進めていくことが大切です。
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