椎間板性腰痛の評価とは?理学療法士が確認するポイントを解説

「前かがみになると腰が痛い」

「長く座っていると腰がつらい」

といった症状があると、「椎間板が原因なのではないか」と考える方もいるかもしれません。

実際、椎間板性腰痛では、前かがみや座位、同じ姿勢を続けたときなどに症状が現れることがあります。

ただし、前かがみで痛いから椎間板性腰痛、座ると痛いから椎間板性腰痛、と一つの症状だけで判断することはできません。

腰痛の理学療法評価では、痛みが出る姿勢や動作だけでなく、発症までの経過、症状が強くなる条件、脚の症状、自動運動、神経学的所見、姿勢や周囲の関節の動きなど、複数の情報を組み合わせて考えます。

この記事では、椎間板性腰痛が疑われるとき、理学療法士がどのような情報を手掛かりに評価しているのかを解説します。

なお、この記事はご自身で椎間板性腰痛かどうかを判定するための「セルフチェック」ではありません。

腰痛にはさまざまな原因があり、必要に応じて医師の診察や画像検査なども含めて判断することが大切です。

椎間板性腰痛は一つの症状だけでは判断できない

椎間板性腰痛を考えるとき、「前屈すると痛い」「座っていると痛い」といった症状は確かに重要な情報です。

椎間板性腰痛にみられる特徴として、前屈や回旋での痛み、同じ姿勢を保つつらさ、中腰や座位での症状などが挙げられます。

一方、急性期には後ろへ反らす動作でも痛みが起こる場合があるとされています。

つまり、

「前屈痛があるから椎間板」
「後屈痛だから椎間関節」

というように、痛む方向と病態を一対一で対応させることはできません。

問診や一つの症状だけで病態を決定づけるのではなく、複数の可能性を頭に置いたうえで次の評価へ進むことが大切です。

そのため理学療法では、最初から「椎間板が原因」と決めるのではなく、

「この症状には椎間板が関係している可能性がある」

という仮説を持ち、ほかの評価結果と照らし合わせながら確かめていきます。

まず問診で「いつ・どんなときに痛むか」を整理する

椎間板性腰痛の評価でまず重要になるのが問診です。

発症した経緯、症状の変化、既往歴、痛みの場所や性質、何をすると悪化・軽減するか、時間帯による違いなどを確認します。

痛みがどのように始まったか

「いつから痛いのか」「突然始まったのか、徐々に始まったのか」「何かきっかけとなる動作があったのか」などを確認します。

同じ「前かがみで痛い」という人でも、

  • 重い物を持った直後から急に痛くなった
  • 数週間かけて徐々に座っているのがつらくなった
  • 腰痛に加えて脚のしびれが出てきた

という場合では、考えるべき病態が同じとは限りません。

発症から現在までの経過も、仮説を立てる大切な材料になります。

痛む場所と脚症状の有無

・腰の中央なのか
・左右どちらかに偏っているのか
・お尻や脚まで症状が広がっているのか

を確認します。

とくに、臀部や脚の痛み・しびれ、感覚の変化、筋力低下などがある場合には、腰痛だけの状態とは分けて考える必要があります。

問診時に「ほかの部位への放散痛があるか」を確認し、神経症状などを考える材料とします。

何をすると痛みが強くなり、何をすると楽になるか

「前かがみ」「座る」「立つ」「歩く」といった動作だけでなく、

  • 「どのくらい続けると症状が出るのか」
  • 「姿勢を変えるとどうなるのか」
  • 「横になると楽になるのか」

といった症状の変化も確認します。

椎間板性腰痛の特徴として、前屈や回旋、同一姿勢保持などで症状が現れ、横になると楽になる場合があることなどが手掛かりとなります。

ただし、これらはあくまで評価の手掛かりです。一つ当てはまっただけで椎間板性腰痛と判断するわけではありません。

動作を確認して椎間板への関与を考える

問診から椎間板の関与が考えられた場合には、実際の身体の動きも確認していきます。

前屈、後屈、側屈、回旋、体幹の傾きなどの自動運動を通じて、動作における変化を観察します。

前屈だけでなく複数方向の動きを確認する

椎間板性腰痛では前屈時に症状がみられることがありますが、前屈だけを確認するわけではありません。

後屈、側屈、回旋なども行い、

  • 「どの方向で症状が出るのか」
  • 「どの方向では出ないのか」
  • 「腰痛だけなのか、脚の症状も変化するのか」

といった情報を集めます。

急性期には後屈でも痛みがみられる場合があるため、後屈痛があることだけを理由に椎間板の関与を除外することもできません。

動作の「どの場面」で痛むかも確認する

理学療法では、「前屈で痛い」という結果だけでなく、その動作の途中でどのように症状が変わるのかを見ることがあります。

例えば、臨床場面でお会いする患者さんの中には、前かがみになる瞬間だけでなく、前屈した姿勢から身体を起こして戻す場面で痛みの変化が確認された例がありました。

また、姿勢を変える途中や日常の立ち座りなど、どの局面で症状が変化するのかを多角的に確認しています。

このように「痛む方向」だけでなく、「動作のどの局面で症状が変化するか」を見ることが、評価を行ううえで参考になります。

脚の症状や神経の状態も確認する

椎間板性腰痛を考えるうえで重要なのが、腰痛だけなのか、神経に関係する症状も伴っているのかを確認することです。

ここは、椎間板性腰痛と腰椎椎間板ヘルニアを混同しないためにも重要です。

腰痛だけか、臀部や脚にも症状があるか

椎間板に関係する腰痛と、椎間板ヘルニアによって神経が刺激・圧迫されている状態は同じではありません。

腰椎椎間板ヘルニアが疑われる場面では、座位保持のつらさや前屈時の症状だけでなく、お尻や脚にかけての症状の有無、SLR(下肢伸展挙上テスト)、感覚、筋力などを合わせて確認します。

SLRなどの神経学的検査も組み合わせる

腰痛評価では、必要に応じてSLR(下肢を伸ばした状態で持ち上げる検査)やSLUMPテスト(神経が圧迫されているかを調べる徒手的検査)、筋力、感覚などを確認します。

ただしここでも、

「SLRが陽性だから椎間板ヘルニア」
「SLRが陰性だから神経には問題がない」

と、一つの検査結果だけで判断するものではありません。

症状の場所、筋力、感覚、ほかの身体所見、医学的診察などと合わせて判断されます。

腰だけでなく姿勢や周囲の動きも確認する

椎間板性腰痛の評価だからといって、椎間板だけを見るわけではありません。

腰椎は骨盤、股関節、胸椎などと連動して動くため、姿勢や周囲の関節の状態も評価材料になります。

姿勢評価は「原因を決める検査」ではない

立っている姿勢や座っている姿勢を観察し、腰椎や骨盤がどのような位置にあるかを確認する場合があります。

ただし、

「猫背だから椎間板性腰痛」
「骨盤が後ろへ傾いているから椎間板が悪い」

というように、姿勢一つから腰痛の原因を決めることはできません。

姿勢は、どのような条件で症状が変わるのかを理解するための一つの情報として扱います。

股関節など周囲の関節も確認する

評価においては、腰椎の動きだけでなく、太ももや股関節周囲の筋肉の柔軟性なども確認します。

これは「特定の筋肉が硬いから椎間板性腰痛になる」という意味ではありません。

股関節や周囲の組織の動き方によって、前かがみや立ち上がりなどの身体の使い方が変化することがあります。

そのため、腰痛を評価するときには腰以外の動きも含めて確認します。

どの所見が症状と関係しているかは、その人ごとに検討する必要があります。

MRIやレントゲンだけで現在の痛みは分かる?

「椎間板性腰痛ならMRIを撮れば分かるのでは?」と思う方もいるかもしれません。

画像検査は重要な医学的情報ですが、腰痛の原因を画像だけで一対一に判断できるわけではありません。

画像に変化があっても痛みがない人はいる

Brinjikjiらによるシステマティックレビュー(2015)では、腰痛などの症状がない人にも椎間板変性や膨隆などの画像所見が多く認められ、年齢とともにその割合が高くなることが報告されています

たとえば椎間板変性は、無症状者でも20歳代で37%、80歳代では96%にみられました

そのため、

「MRIで椎間板が変性している」

「現在感じている腰痛の原因がその椎間板である」

とは限りません。

画像所見は、症状の場所、神経症状、身体診察、経過などと合わせて解釈する必要があります。

腰痛があれば必ず画像検査をするわけではない

NICEの腰痛・坐骨神経痛ガイドラインでは、非専門医療の場で腰痛患者すべてに一律に画像検査を行うことは推奨されていません。

専門的な診療の場でも、画像結果によって治療方針が変わると考えられる場合に検討するとされています。

ACR(米国放射線学会)のAppropriateness Criteriaでも、重大な兆候がない急性腰痛や、初期の亜急性・慢性腰痛では、初回からMRIやレントゲンを行うことは通常適切ではないとされています。

一方で、神経症状の進行や重大な病態が疑われる場合などには、画像検査が重要になることがあります

つまり、画像検査は「腰痛の原因を当てるためだけの検査」ではなく、医学的な診察や症状の経過を踏まえて必要性が判断されます。

評価したあとも「仮説が合っているか」を確認する

椎間板性腰痛の評価は、いくつかの検査を行って病名を決めたら終わり、というものではありません。

たとえば、

  • 「前屈や座位で症状が強くなる」
  • 「神経学的な異常は目立たない」
  • 「ほかの動きや身体所見も合わせると、椎間板の関与が考えられる」

という情報から、一つの仮説を立てたとします。

その仮説に基づいて姿勢や動作の調整、理学療法などを行い、その後、

  • 「痛みは変わったか」
  • 「前屈動作はどうなったか」
  • 「座れる時間は変化したか」
  • 「別の症状が目立つようになっていないか」

などを再び確認します。

もし想定していた変化がみられなければ、「最初の仮説が十分ではなかった可能性」を考え、別の要因も含めて評価し直します。

臨床においては、最初に考えた問題点に固執するのではなく、対応後の反応をみながら再評価を行い、必要に応じて考え方の方向性を更新していくプロセスが大切になります。

このような、

評価 → 仮説 → 対応 → 再評価 → 必要なら仮説を修正する

という繰り返しが、理学療法評価では重要になります。

まとめ

椎間板性腰痛の評価では、「前かがみで痛い」「座ると痛い」といった一つの症状だけで原因を判断するわけではありません。

発症までの経過、痛む場所、症状が強くなる・楽になる条件、前屈や後屈などの動き、脚の症状、神経学的所見、姿勢や周囲の関節の動きなど、複数の情報を組み合わせて椎間板の関与を考えていきます。

また、MRIなどで椎間板の変化がみられても、それだけで現在の腰痛の原因と判断することはできません。画像所見も、症状や身体所見と合わせて解釈する必要があります。

そして、一度「椎間板が関係しているのではないか」と仮説を立てても、それで評価が終わるわけではありません。対応後の症状や動作の変化を確認し、必要であれば別の可能性も含めて考え直します。

椎間板性腰痛そのものの仕組みについて詳しく知りたい方は「椎間板性腰痛とは?」、前かがみや座位での腰痛について知りたい方は、それぞれの症状記事をご覧ください。

具体的な運動やリハビリについては、今後の腰痛リハビリ記事で詳しく解説します。