腰椎椎間板ヘルニアの20歳男性|90分の授業は座れるようになっても前屈時の症状が残った実例

「ヘルニアと診断され、学校の授業や仕事で長時間座り続けるのがつらい」

「リハビリを続けて座れる時間は伸びてきたけれど、前かがみになるとお尻に症状が残る」

「90分座れるようになってきたけれど、前かがみで症状が残っている。この状態をどう考えればよいのだろう?」

このような疑問や不快感を感じたことはありませんか?

腰椎椎間板ヘルニアによって長時間座ることが難しくなったとき、多くの方が「長く座れるようになれば元通りになる」と考えがちです。

しかし、実際の理学療法において確認されるのは、単に「座っていられる時間が伸びたかどうか」だけではありません。

授業や仕事といった生活上の課題がどの程度行えるようになったかを確認すると同時に、前かがみ(前屈)などの特定の動作で残る症状を個別に評価し、その時点の状態に合わせてアプローチを調整していくプロセスが重要になります。

この記事では、腰椎椎間板ヘルニアと診断され、授業での長時間座位やつらい前屈時症状を抱えていた20歳男性・学生の症例をご紹介します。

長時間座るという生活上の課題が少しずつ改善していく一方で、前屈時の症状が残り、それらを分けて評価しながら運動内容が調整されていった実際の臨床プロセスを解説します。

なお、この記事は特定の評価や運動を行えば必ず腰痛やヘルニアが改善するという保証をするものではありません。

急激な足の筋力低下、お尻や脚の強いしびれ、感覚の麻痺、排尿・排便の異常(尿が出にくい、漏れてしまうなど)、発熱を伴う腰痛などがある場合はセルフケアを優先せず、速やかに医療機関を受診してください。

受験勉強時期からの下肢症状と「座って授業を受けるつらさ」

この男性は以前から腰痛があり、受験勉強の時期に左下肢症状が出現した経過がありました。受診の結果、腰椎椎間板ヘルニアと診断されました。

左L5(第5腰椎)神経根ブロックを3回受けた経過があり、その間も症状を確認しながらリハビリテーションが続けられていました。

初期における主な主訴や症状悪化の傾向は以下の通りでした。

  • 主な困りごと: 授業での座位姿勢を保つことがつらい、前かがみ(前屈)姿勢で左お尻(左臀部)に症状が出る
  • 症状が強まる場面: 前かがみ(前屈)、長時間座ること(座位保持)、立ち続けていること(立位保持)、朝起きるとき(起床時)
  • 症状が和らぐ場面: 温めること(温熱)、横になること(臥位)

脚の明らかな知覚低下や筋力低下は確認されていなかったものの、学校生活において「座って授業を受けること」と「身体を前かがみにすること」が大きな課題となっていました。

4月から5月|長く座ることと前かがみの症状が続いていた

リハビリが開始された4月時点では、主訴である「授業で長く座っていることがつらい」「前かがみになると左お尻に症状が出る」という状態が強くみられていました。

5月に入っても、本人からは「90分の授業はきつい」「起床時や前かがみになるのがつらい」といった訴えが続いていました。

この時期、担当した理学療法士は、急激に強い負荷をかけるのではなく、身体の状態を確認しながら以下のようなプログラムを組み込んで運動を進めていました。

  • 呼吸を使った低負荷の運動: 息を止めずにリラックスした呼吸を行いながら、体幹を穏やかに意識する運動
  • 股関節や体幹を使った運動: 股関節を動かす練習や四つばいなど、当時の評価に応じた低負荷の運動を組み込む

その後も症状や評価の経過に合わせて、運動内容が追加・変更されていました。

6月|90分の授業は座れるようになったが、前屈時の症状は残っていた

リハビリを継続した6月に入ると、本人の訴えに明確な変化が現れました。

5月には「90分の授業はきつい」と話していましたが、6月には本人から「90分の授業は大丈夫になってきた」という言葉が聞かれるようになったのです。

学校生活において大きな支障となっていた「90分間座り続けて授業を受ける」という訴えには変化がみられていました。

一方で、同じ6月の経過記録には「前屈時の症状はまだある」と残されていました。

「長時間座ること」に関する変化と、「前かがみになったときに出てくる症状」という課題が、別々に観察されていたのです。

症状や評価の経過に合わせて運動内容も変化していた

6月時点の治療プログラムでは、ハムストリングス(太もも裏)のストレッチ、胸椎(背中上部)の回旋運動、お尻を持ち上げる運動(ヒップリフト)、背骨を穏やかに伸ばす運動(脊柱伸展運動)などが組み込まれていました。

担当者は当時、体幹の使い方や背骨の動きも評価上の課題として捉え、運動内容を検討していました。

固定された同じメニューをやり続けるのではなく、症状や動作の経過を見ながら、運動の選択や調整が行われていたことがうかがえます。

この実例から考える「ひとつの課題の改善」と「残る症状」の捉え方

この20歳男性の経過には、きわめて客観的な事実が記録されています。

  • 5月には「90分の授業はきつい」と話していた
  • 6月には「90分の授業は大丈夫になってきた」と変化した
  • しかし同じ6月にも「前屈時の症状はまだある」と記録されていた

この症例では、「90分の授業を受けられるか」と「前かがみで症状が出るか」は、別々の経過をたどっていました。リハビリでは、一つの変化だけで全体を判断するのではなく、その人にとって必要な生活動作と、残っている症状をそれぞれ確認していく視点が重要になります。

また、資料の結部においても、体幹の安定性などに変化がみられた一方で「前屈時の下肢症状は改善せず」と記録され、その後も評価や運動を継続していく方針が示されていました。

「長時間座れるようになったからすべて解決した」と自己判断して無理な動作を重ねたり、逆に「まだ前かがみで症状が出るから何も変わっていない」と極端に捉えたりするのではなく、変化した部分と残っている部分をそれぞれ冷静に整理することが大切なのです。

まとめ

腰椎椎間板ヘルニアの20歳男性の事例が示すように、腰痛のリハビリとは「痛みがゼロになったか」という単一の数値だけを追うものではありません。

)「授業で90分座れるようになってきた」という生活上の改善をしっかりと確認すると同時に、「前かがみになったときに出てくる症状」という残された課題を見逃さず、経過や動作に合わせてアプローチを調整していく柔軟なプロセスが求められます。(この患者さんのリハビリは、その後も継続されています)

長時間座ることは楽になってきたけれど特定の動作で症状が残っている方や、授業・仕事への復帰過程での身体の使い方に不安がある方は、自己判断で強い運動を反復せず、整形外科の医師や理学療法士などの専門職へ相談し、ご自身の状態に応じた丁寧な評価を受けることをおすすめします。