関節リウマチで股関節が壊れることはある?|歩けなくなるまでと人工股関節手術に至った実例

関節リウマチは手や指の病気というイメージが強いかもしれません。

しかし、人によっては股関節にも障害が及び、歩くことや一人暮らしが難しくなることがあります。

関節リウマチは、手や膝だけの病気ではありません

「リウマチなのに、股関節まで悪くなることがあるのだろうか。」

そのような不安を抱えている方も多くいらっしゃるでしょう。

関節リウマチは手や指だけではなく、全身に影響を及ぼす病気です。病気そのものや治療、活動量の低下など、さまざまな要因が重なることで、股関節にも大きな障害が生じることがあります。

今回ご紹介するのは、関節リウマチに加えて間質性肺炎(肺に炎症や傷あとができ、息切れや咳が続きやすくなる病気)を経験し、その後、股関節の痛みが強くなり、大腿骨頭壊死(股関節の骨に十分な血液が届かなくなり、骨が潰れてしまう病気)と診断された沼田繭子さん(仮名・50代女性)の実例です。

歩くことが難しくなり、一人暮らしの生活が大きく変わっていく中で、最終的に人工骨頭全置換術(股関節の傷んだ部分を人工の部品に置き換える手術)を受けることになりました。

この記事では、股関節の痛みがどのように進行し、手術が必要になるまで生活がどのように変化していったのか、その経過を中心にご紹介します。

最初は関節リウマチによる痛みでした

全身の病気が、少しずつ生活を変えていった

沼田さんは、もともと関節リウマチの治療を続けており、薬物療法(薬による治療)によって症状をコントロールしながら一人暮らしを続けていました。

参照記事👇

しかし、その後に難病である間質性肺炎を発症し、急性増悪(急激な悪化)による緊急入院などを経験されます。

肺炎の治療のためにステロイドパルス療法(副腎皮質ホルモンを大量に点滴する治療)などの強力な治療が必要となり、入退院を繰り返す中で体力や脚の筋力は少しずつ低下していきました。

さらに、リウマチの活動性を抑えるための治療強化と、免疫力が下がったことによる感染症への対応も必要となり、思うように身体を動かせない時期が続きます。

関節の痛みだけでなく、「動きたいのに動けない」という状況が続いたことで、活動量は徐々に減っていきました。

沼田さんの場合、関節リウマチだけでなく、間質性肺炎の治療や入退院による体力低下など、いくつもの要因が重なりながら生活が変化していきました。

その中で股関節にも障害が及び、大腿骨頭壊死と診断されることになります。

股関節の痛みが少しずつ強くなっていった

当初は一本杖と4点キャスター付きのショッピングカートを使いながら、自分で買い物へ出かけ、ご自身のペースで料理を作る生活を続けていました。

しかし、股関節の痛みは少しずつ強くなり、歩ける距離は短くなっていきました。

台所に立って料理をする時間も減り、外出の回数も少なくなります。

沼田さんは「できるだけ自分で生活を続けたい」という思いを持ち続けていましたが、その思いとは裏腹に、身体は少しずつ思うように動かなくなっていきました。

大腿骨頭壊死と診断されました

股関節の痛みが続いた結果、沼田さんは大腿骨頭壊死と診断されました。

大腿骨頭壊死とは、大腿骨(太ももの骨)の先端にある骨頭へ十分な血液が届かなくなり、骨の組織が壊れて潰れてしまう病気です。

原因は一つではありませんが、リウマチや肺炎の治療で用いられるステロイド治療(プレドニゾロンやリンデロンなどの内服薬)は、一般的に発症に関係する要因の一つとして知られています。

ただし、沼田さんの場合、この病気がどのような要因で生じたのかを断定することはできません。

重要だったのは、股関節の痛みが急速に強くなり、日常生活に大きな影響を及ぼし始めたことでした。

痛みが生活そのものを奪っていった

歩くだけで痛い。

椅子から立ち上がるだけで痛い。

安静にしている時でも、姿勢を少し変えたり、股関節が少し動いたりしただけで痛みが走る状態となりました。

定時の鎮痛薬を1日3回服用し、さらに頓用(痛むときだけ飲む薬)の痛み止めや坐薬を重ねても十分な効果は得られず、その効き目は「薬を飲まないよりはほんの少しマシ」という程度でした。

痛みによって夜も眠れず、食欲も低下し、食事量も減っていきました。

家の中では車椅子を使う生活となり、一人でできていた移動や生活動作が一つずつ難しくなっていきます。

この時期、見かねた訪問看護師は、状態を心配して主治医へ連絡し、入院時期を早めることも提案しています。

しかし、沼田さんは、「家で過ごしたい」という希望を話されました。

「病院では自分のペースで行動することが難しく、鎮痛剤の点滴も効きにくかったりする。何より、つらい時に周囲を気にして、泣きたい時に泣けないから」

そこには、住み慣れた自宅で、自分らしい生活を続けたいという強い思いがありました。

人工股関節手術という選択

痛みが強くなり、自宅での生活維持が難しくなったことで、沼田さんは大腿骨頭壊死に対して人工骨頭置換術を受けることになりました。

この手術は、股関節の傷んだ部分を人工の部品に置き換え、痛みの軽減や歩きやすさの改善を目指す手術です。

手術の詳しい内容や流れについては、別の記事で詳しく紹介しています。

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手術は終わりではなく、新しい生活の始まりでした

手術後、股関節の痛みは大きく軽減し、屋内での移動は少しずつ改善していきました。

車椅子中心だった生活から、杖や居室の伝い歩きで移動できる場面が増え、日常生活動作(ADL:食事や入浴など毎日の生活に必要な基本動作)の改善や活動量の増加が見られるようになりました。

自分のペースで料理をしたり、買い物へ出かけたり、お孫さんのお世話をしたり、長時間のお出かけを楽しんだりする時間も戻ってきました。

関節リウマチという病気そのものが治ったわけではありません。

外来でのフォローを受けながらステロイド薬を少しずつ減らしていくなど、治療はその後も続いていきます。

それでも、股関節の痛みが大きく軽減したことで、「できること」は確実に増えていきました。

術後の生活については、別の記事でもご紹介しています👇

理学療法士として感じたこと

関節リウマチを抱える方では、手足の小さな関節だけでなく、股関節のような大きな関節にも障害が及ぶことがあります。

「まだ杖で歩けるから大丈夫」

「もう少し様子を見よう」

と考えているうちに、骨の変形や筋力低下が進み、生活への影響は少しずつ広がっていくことがあります。

沼田さんも、最初から手術が必要だったわけではありませんでした。

できる限り自宅で生活を続けたいという強い思いを持ちながら、その時々の身体に合わせて治療やリハビリを続け、それでも痛みが生活を大きく制限するようになった結果として、手術という選択に至りました。

人工股関節手術には、股関節の痛みを軽減するだけでなく、その人が望む生活を続けられるよう支えるという大切な役割もあります。

股関節の痛みは、歩きにくさだけでなく、暮らし方そのものを変えてしまうことがあります。

だからこそ、「まだ我慢できるから」と一人で抱え込まず、早めに主治医やリハビリ職へ相談し、その時々の身体に合った方法を一緒に考えていくことが大切です。

生活を続けていくための方法は、一人ひとり異なります。

その時々の身体に合わせながら、自分らしい暮らしを続ける方法を少しずつ見つけていくことが、生活再構築の第一歩になるのではないでしょうか。